自民×維新連立の現実味 “改革保守連合”は実現するのか

自民×維新連立

連立の背景 自民の少数与党化と野党間の比較

自民党は10月4日の総裁選で高市氏を新総裁に選出したが、公明党の離脱により衆院議席は196に留まり、過半数(233議席)から37議席不足している。参院でも過半数割れの状況だ。一方、日本維新の会衆院35議席を有し、両党の合計で231議席となり、過半数に肉薄する。維新の協力がなければ、臨時国会(21日召集予定)での首相指名選挙で高市氏の当選は極めて厳しい。

この連立模索は、野党間の連携難航が背景にある。立憲民主党野田佳彦代表は維新や国民民主党との野党3党協議を主導したが、安全保障やエネルギー政策で折り合いがつかず、統一候補擁立は頓挫した。国民民主党玉木雄一郎代表に対しても高市総裁は連立入りを打診したが、玉木氏は「隔たりが大きい」と応じなかった。維新の吉村代表は「政策協議がまとまれば高市氏に投票する」と明言しており、自民にとって最も現実的な選択肢となっている。

こうした中、維新は「執行部一任」を両院議員総会で決定。党内では連立参加を後押しする声が相次ぎ、慎重論は少数派に留まった。公明離脱の「災い」が、維新との「福」につながる可能性が出てきた形だ。

政策の共通点 改革志向の基盤

両党の政策は、外交・安全保障や憲法改正を中心に「改革保守」の共通項が多い。高市総裁は会談後、「基本政策はほぼ一致している」と強調し、吉村代表も「共通点は多くある」と応じた。具体的な一致点は以下の通り。

政策分野 自民党の立場 維新の立場 共通点のポイント
憲法改正 9条改正推進、緊急事態条項導入 9条見直しと緊急事態条項を公約 改憲議論の加速。両党で議員立法を検討可能。
外交・安全保障 日米同盟強化、防衛力増強 同盟重視、積極外交 中国・北朝鮮脅威への対応で一致。維新の「現実的な安保政策」が自民を補完。
地方分権 道州制検討、権限移譲 副首都構想推進、地方主権 東京一極集中是正。維新の副首都構想(大阪をバックアップ都市に)は自民の首都機能バックアップ公約と親和性高く、高市総裁が賛意を示した。
教育無償化 高校授業料無償化拡大 教育投資優先、無償化推進 教育機会均等。維新の社会保障改革と連動し、現役世代負担軽減策の基盤に。

これらの共通点は、両党の「改革保守イデオロギーを反映。維新の吉村代表は「副首都構想と社会保障改革が二本柱」と述べ、高市総裁も補助金整理などの行政改革で歩調を合わせる姿勢を見せた。16日の協議では、これらを軸に十数項目(政治資金改革、食料品消費税ゼロ、国会議員定数削減など)が議論される見込みだ。

相違点 エネルギー・税制・防衛費の壁

一方で、両党の政策整合性を阻害する相違点も少なくない。維新の「身を切る改革」志向が、自民の伝統的な支持基盤(企業・農林水産団体)と衝突する可能性が高い。

政策分野 自民党の立場 維新の立場 相違点の課題
原発政策 再稼働推進、エネルギー安定供給 脱炭素優先、原発依存低減 自民の原発推進が維新のグリーン政策と対立。エネルギー基本計画の見直しが焦点。
消費税 維持・増税容認(社会保障財源) 食料品税率ゼロ、軽減税率拡大 維新の減税志向が自民の財政規律と摩擦。協議で譲歩が必要。
防衛費 GDP比2%目標、増額継続 効率化優先、国民負担軽減 自民の積極増強に対し、維新は「無駄削減」を強調。予算配分の調整が鍵。

これらのすれ違いは、連立の成否を左右する。維新は企業・団体献金の禁止を強く求め、自民党内では抵抗が予想される。また、地域競合(大阪での自民・維新対立)も課題だ。高市総裁は「政策の一致が第一」と強調するが、20日までの合意形成は容易ではない。

世論と野党側の反応 支持拡大か、反発の火種か

世論調査では、自民との連立相手として維新が21%と最も支持を集め、国民民主(20%)を上回る。朝日新聞の5月調査では、維新の改革イメージが評価されたが、X(旧Twitter)では「維新は媚中」「自民と組むと党勢死ぬ」との懸念が噴出。維新支持者からも「関西以外全滅のリスク」を指摘する声が上がる。

野党側は反発が強い。立憲の野田代表は「十数年に1度のチャンスを逃すな」と野党一本化を呼びかけたが、維新の離脱で崩壊。国民の玉木代表は「維新に騙された」と不満を漏らし、YouTubeライブで恨み節を展開。公明党も維新の副首都構想に疑問を呈し、野党連携の可能性を匂わせる。一方、自民党内では菅義偉元首相ら維新派が後押しするが、伝統派の抵抗もくすぶる。

結論 政策整合性が鍵を握る

自民・維新の連立は、改革保守の「改革連合」として魅力的ながら、相違点の解消が急務だ。16日の協議で副首都構想や社会保障改革が進展すれば、高市政権の誕生は目前。失敗すれば少数与党の不安定政権が続き、政局はさらに混迷を極めるだろう。両党の政策整合性は、単なる政権維持を超え、日本政治の新たな地平を拓くか否かを決める試金石となる。20日までの動向に注目が集まる。