
大阪を「副首都」と位置づける関連法案が、思わぬ形でつまずいています。問題になっているのは副首都という構想そのものではありません。法案に付け足された「住民投票のルール」です。「憲法違反の疑いがある」との指摘が広がり、2026年6月22日には高市首相が法案の修正を求める事態となりました。何が争点なのかを、やさしく整理します。
何が起きたのか
副首都関連法案は、日本維新の会と自民党による連立政権の合意書に明記され、今の国会での成立を目指してきた法案です。ところが、その付則(本体に付け足された規定)の一部に「憲法違反ではないか」との批判が集まりました。
きっかけは、自民党内からの反発です。党の会議では「憲法違反だ」との声が相次ぎ、法案を提出する手続きに進むのが難しくなったと報じられています。そして6月22日、高市首相が維新の吉村代表と会談し、問題視された規定を法案から削除するよう要請しました。
そもそも副首都・大阪都構想とは
「副首都」とは、東京で大地震などの大きな災害が起きたときに備え、もう一つの拠点として大阪に首都機能を持たせようという考え方です。この構想自体には、自民党内でも賛成が多いとされています。
問題は、法案の付則に「大阪都構想」を後押しする内容が盛り込まれた点です。大阪都構想とは、大阪市を廃止して複数の「特別区」に作り変える計画のこと。やるかどうかは住民投票で決めますが、過去には大阪市民の住民投票で否決された経緯があります。
今回の付則では、この賛否を大阪市民だけでなく、大阪府全体の住民(府民)にも問えるようにする内容が含まれていました。ここが大きな論点になったのです。
「違憲疑い」の中身 ― 憲法92条とは
指摘の根拠となっているのが、憲法92条です。これは「その地域のことは、その地域の住民が決める」という地方自治の考え方(住民自治)を定めた条文です。
大阪市を廃止するかどうかは、大阪市民にとって重大な問題です。それを市の外に住む府民まで一緒に投票で決めてしまうのは、この住民自治の原則に反するのではないか――というのが「違憲疑い」の中身です。法案に異論を唱える憲法学者からも、同様の指摘が出ているとされています。
各党・専門家の反応
自民党内では、副首都構想には賛同が多いものの、この付則には反発が拡大しました。一方の維新は、衆議院法制局(法律の専門的なチェックを行う国会の機関)を招いた勉強会を開き、「違憲ではない」との見解を引き出したとして、問題ないという立場をとってきました。
このように、同じ法案をめぐって「憲法違反の疑いがある」とする見方と「問題ない」とする見方が分かれており、専門家の間でも評価が一致していない状況です。
今後の展開
6月22日の会談で、高市首相は維新に対し、府全域で住民投票を実施するとした規定の削除を求めました。あわせて、「都」への名称変更の手続きについても、住民投票ではなく道府県議会の議決と国会の承認で進めるよう要請しています。問題視されてきた部分を取り除く方向で、修正をうながした形です。
ただし、住民投票の範囲を広げる規定は維新の看板政策にも関わる部分であり、維新がこの修正に応じるかどうかは、まだ見通せないとされています。今国会での成立を目指す中で、与党内の調整がどう着地するのかが、当面の焦点となりそうです。
参照元
- 日本経済新聞「高市首相、維新に副首都法案の修正要請 都構想『府全域で投票』削除」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA220YB0S6A620C2000000/
- 東京新聞「自民、副首都法案修正検討 批判続出、党内手続き困難」 https://www.tokyo-np.co.jp/article/496187
- 沖縄タイムス(共同通信)「自民、副首都法案修正検討」 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1862862
- KAB熊本朝日放送「衆・法制局『違憲でない』副首都法案」 https://www.kab.co.jp/news/article/16641455