
2025年11月、ワシントン条約(CITES)の会議で、EUが提案していた「うなぎ19種すべての国際取引を規制する案」が否決されました。
このニュースを受けて、「うなぎは本当に絶滅の危機なのか」「これまで通り食べていてよいのか」といった疑問の声が広がっています。
本記事では、今回の規制案のポイントや、うなぎの資源状態、今後の消費のあり方について、内容をわかりやすくまとめました。
- うなぎの国際取引規制とは?
- EUが出した提案が否決された理由
- うなぎは本当に絶滅危機なのか
- 私たちは「うなぎを食べるのをやめるべき」なのか
うなぎの国際取引規制とは?
まず前提として、うなぎは現在でも「完全な人工ふ化から出荷までの養殖」が一般化しているわけではなく、多くが野生の稚魚(シラスウナギ)を捕まえて育てる形で生産されています。
日本で消費されるうなぎの多くは、中国や台湾などから輸入された稚魚や加工品に依存しています。
ワシントン条約とは何か
うなぎの国際取引が問題になる背景には、野生動物を守るための国際ルールである「ワシントン条約(CITES)」の存在があります。
これは、絶滅のおそれがある野生生物を守るため、国際的な商取引を管理・制限しようという条約で、180か国以上が参加しています。
規制は、対象種をどの附属書に掲載するかで強さが変わります。
- 附属書I:原則として国際取引は禁止レベルの厳しい規制
- 附属書II:輸出入に政府の許可証が必要で、資源の状況を見ながら取引を管理する段階
今回議論されているのは、このうち附属書IIへの掲載です。附属書IIに入ると、稚魚や加工品も含めて、輸出入には輸出国が発行する許可証が必要となり、違法取引の抑制につながる一方で、流通量が減ったり価格が上がる可能性があります。
ヨーロッパウナギはすでに厳格規制
ヨーロッパウナギは、資源の急激な減少を受けて2007年に附属書IIに掲載され、その後はEU域外への輸出が事実上禁止されてきました。
その結果、密輸が横行し、うなぎが別ルートでアジアに流れている問題も指摘されています。
EU提案が否決された理由
2025年11月の締約国会議で、EUとパナマなどが「全19種のうなぎを附属書IIに掲載すべきだ」とする提案を行いました。
背景には、資源量の減少や違法取引の広がりに対する強い危機感があります。
しかし、投票の結果は
賛成35、反対100、棄権23
となり、附属書IIへの掲載は否決されました。
なぜ却下されたのか
否決に至った背景には、次のような要因が指摘されています。
- 日本が「資源管理は各国の取り組みで対応可能であり、現時点での一律規制は時期尚早だ」として強く反対した
- 米国や中国も同様に反対に回り、途上国の一部も慎重姿勢を示した
- 完全養殖技術の研究が進んでいることから、「将来の技術進展を見ながら段階的な対応をすべきだ」という見方があった
- 規制を一気に強めると正規ルートの取引が細り、かえって密輸や違法取引が増えるおそれがあると懸念された
ワシントン条約で附属書の変更を行うには、締約国の「3分の2以上の賛成」が必要です。今回の提案は、そのハードルを越えられませんでした。
うなぎは本当に絶滅危機なのか
では、「規制案が否決された=問題なし」と言えるのでしょうか。結論から言えば、そうではありません。
資源状況そのものは、依然として厳しいと考えられています。
公式評価 ニホンウナギは絶滅危惧種
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、ニホンウナギは2014年から「絶滅危惧IB類(EN)」に分類されています。
これは「野生での絶滅の危険性が高い」とされるレベルで、世界的にも注意が必要な種として位置づけられています。
なぜうなぎは減っているのか
うなぎの数が減少している理由として、次のような要因が挙げられます。
- 長年にわたる乱獲(とりすぎ)
- 河川のダム建設やコンクリート護岸による生息環境の悪化
- 海流や海水温の変化など、産卵場周辺の環境変化
- 違法な採捕や密輸の増加
日本は世界有数のうなぎ消費国であり、東アジア地域全体で見ても、うなぎ資源に対する圧力は小さくありません。
私たちは「うなぎを食べるのをやめるべき」なのか
うなぎは、土用の丑の日やお祝いごとの定番料理として親しまれてきました。一方で、資源状態が悪化しているのであれば、「絶滅させてまで食べ続けるべきなのか」という根本的な問いも避けて通れません。
うなぎの味や食文化を好む一方で、「絶滅の危険があるなら、無理に食べ続けるべきではない」という考え方は、近年の世論でも広がりつつあります。資源管理や環境保全の観点からも、こうした意識の高まりは重要になっています。
結論 完全にやめるというより「消費を減らす」方向へ
現時点の科学的知見を踏まえると、今の消費量がうなぎ資源にとって重い負担になっていることは否めません。
ただ、突然の全面禁止は、正規の産業を追い込み、違法取引を助長するおそれもあります。
そのため、多くの専門家や環境団体は
- 消費量を段階的に減らす
- 資源管理が比較的しっかりしたルートの製品を選ぶ
- うなぎに依存しないメニューや代替食材を広げる
といった「ソフトランディング」に近い方向性を提案しています。
消費者にできる行動
- うなぎを食べる頻度を減らし、特別な日のごちそうに限定する
- 認証など、持続可能性に配慮した商品を意識して選ぶ
- うなぎ以外の魚介類やスタミナ料理の選択肢を増やす
こうした小さな行動でも、多くの人が意識を変えることで、資源への負荷を軽減することにつながります。
今回のニュースのポイントまとめ
- EUなどが提案した「うなぎ全19種の国際取引規制強化案」は、2025年11月の会議で否決された
- 規制案が否決されても、ニホンウナギが国際的に絶滅危惧種と評価されている事実は変わらない
- 今後も再提案や追加的な資源管理措置が議論される可能性が高い
- 消費者の側も、うなぎの「量」や「選び方」を見直すことで、資源保全に関わることができる
うなぎは、日本の食文化を象徴する存在の一つです。だからこそ、将来の世代も楽しめる形で残していくために、どのように付き合っていくのかが問われています。



