2026年4月2日 速報
トランプ米大統領は4月1日夜(米東部時間、日本時間2日午前10時)、ホワイトハウスからテレビで国民向け演説を行い、対イラン軍事作戦「Operation Epic Fury(オペレーション・エピック・フューリー)」の現状を報告した。約19分間の演説で、トランプ氏は軍事的な成果を強調しつつ、今後2〜3週間でさらに激しい攻撃を行うと宣言。一方で、イラン側との停戦協議にも言及し、合意に至らなければ発電所や石油施設への攻撃に踏み切ると警告した。
作戦開始から約1カ月。日本を含む世界経済に大きな影響を与えているこの紛争は、いよいよ最終局面に入りつつあるのか。演説の内容と日本への影響を整理する。
演説の5つのポイント
「海軍は消滅、空軍は壊滅」――軍事的成果を強調
トランプ氏は演説で、米軍がこの1カ月間で「かつてないほど迅速で圧倒的な勝利」を収めたと主張した。具体的には、イランの海軍がほぼ完全に壊滅し、空軍も機能を失い、弾道ミサイルの大半が使用不能になったとアピールした。核関連施設や革命防衛隊の拠点も精密攻撃で破壊したとしている。
米中央軍の発表によれば、作戦開始以降1万2,000回以上の戦闘飛行が実施された。また、革命防衛隊の海軍司令官タンスィーリー師が3月26日のイスラエル軍空爆で死亡するなど、軍事指導部への打撃も大きい。
「あと2〜3週間」で任務完了を示唆
トランプ氏は、核心的な戦略目標が達成に近づいているとの認識を示した上で、今後2〜3週間で「極めて強力な攻撃」を行うと予告した。演説ではイランを「石器時代に戻す」との強硬な表現も使い、決意を示した。
ただし、明確な撤退時期は示されなかった。CBS Newsの報道によれば、トランプ氏は「非常にまもなく」という表現を繰り返したものの、具体的な終了日程には言及していない。
「合意がなければ発電所を攻撃」――エスカレーションの脅し
演説の中でもっとも注目を集めたのが、停戦交渉が失敗した場合のエスカレーションへの言及だ。トランプ氏は、今後2〜3週間で合意が得られなければ、イラン全土の発電所を「おそらく同時に」攻撃すると警告した。石油施設やカーグ島(イランの主要原油積み出し拠点)への攻撃の可能性にも言及している。
これまでの攻撃は主に軍事目標に限られていたが、発電インフラへの攻撃は民間生活を直撃するため、国際法上の議論を呼ぶ可能性がある。
「体制転換は目標ではない」が、指導部は変わった
トランプ氏は「体制転換(レジームチェンジ)は目標ではなかった」と述べた。しかし同時に、ハメネイ師を含む旧指導部が死亡し、結果的に指導部が刷新されたことに言及。新しい指導者については「前任者よりも穏健で知的」と評価した。
演説に先立ち、トランプ氏はSNS(Truth Social)で「イランの新体制大統領が停戦を要請した」と投稿。停戦の条件として、ホルムズ海峡の完全開放を求めた。
ガソリン価格には「短期的な影響」と弁明
米国内でガソリン価格が1ガロン4ドル(約634円)を突破し、2022年以来の高水準に達している状況について、トランプ氏は「イランが商業タンカーを攻撃したことが原因」と責任をイラン側に転嫁。作戦が終われば「価格は一気に下がる」と楽観的な見通しを示した。
日本への影響は? 3つの注目点
ホルムズ海峡封鎖と原油価格の高騰
日本が輸入する原油の約8割はホルムズ海峡を経由している。作戦開始以降、イラン側の攻撃を恐れて大半のタンカーが航行を回避しており、海峡は事実上の封鎖状態が続いている。
この影響で原油価格は急騰し、トランプ氏の演説後にはWTI原油先物が一時1バレル104ドル台まで上昇した。演説で「2〜3週間の激しい攻撃」が予告されたことで、早期停戦への期待が後退したためだ。日本国内のガソリン小売価格について、政府は補助金制度を再開して1リットル170円程度に抑える方針を示しているが、紛争が長期化すればさらなる価格上昇は避けられない。
「艦船派遣」への圧力
トランプ氏は3月以降、日本を含む各国にホルムズ海峡への艦船派遣を繰り返し求めてきた。3月31日にはSNSで「石油は自分で手に入れろ」と各国を突き放す発言もしている。
高市早苗首相は3月19日の日米首脳会談に先立ち、英国など6カ国によるホルムズ海峡の安全航行に関する共同声明に参加。「有志連合」の拡大に外交努力を行うことでトランプ氏の理解を得た形だ。ただし、自衛隊の戦闘地域への艦船派遣については「海上警備行動に基づく派遣は困難」との認識を示しており、法的・政治的なハードルは高い。
石油備蓄の放出と経済への影響
日本政府はすでに石油備蓄の放出を決定しており、民間備蓄15日分と国家備蓄1カ月分の放出を予定している。日本には約254日分(約4億7,000万バレル)の備蓄があるとされるが、紛争が長期化した場合の経済への影響は深刻だ。
野村総合研究所の試算によれば、ホルムズ海峡の封鎖が完全かつ長期に及んだ場合、原油価格は1バレル140ドルまで上昇し、日本のガソリン価格も大幅な上昇が見込まれるという。
イラン側の反応と今後の見通し
トランプ氏は「イランが停戦を求めている」と主張しているが、イラン側の反応は複雑だ。イランのペゼシュキアン大統領は3月31日、米国が攻撃を停止し再攻撃しないと約束すれば戦闘停止に応じる用意があると述べた。しかしイランは、レバノン(ヒズボラ)を含む包括的な停戦を条件としており、米国が提示した15項目の和平案を拒否している。
また、米情報機関は「イラン政府は現時点で交渉に応じる意思がない」と評価しているとの報道もある。イランは中国・ロシアとの三国間戦略協定(2026年1月締結)を背景に、外交的・軍事的な持久戦を志向しているとの分析もある。
ホルムズ海峡には依然として機雷が残されている可能性があり、たとえ停戦が実現しても、航行の完全な正常化には時間がかかる。トランプ氏は「あと2〜3週間」と繰り返しているが、その後の出口戦略は不透明なままだ。
まとめ|「勝利演説」の裏にある不確実性
今回の演説は、作戦の成功をアピールし、国内の支持をつなぎとめることが最大の目的だったと見られる。中間選挙が近づく中、ガソリン価格の高騰や戦争への懸念から支持率が低下しており、トランプ氏にとって「早期勝利」の印象づけは政治的に不可欠だ。
しかし、イラン側が簡単に交渉のテーブルにつく保証はなく、発電所攻撃などエスカレーションのリスクも残る。日本にとっては、ホルムズ海峡の安全確保、エネルギー供給の多角化、そして米国からの安全保障面での要求への対応という三重の課題が続くことになる。
今後2〜3週間が、この紛争の行方を左右する重要な局面となりそうだ。