最近、東京の葬儀場は中国資本に独占されたという言説を見かけます。結論から言うと、この言い方は事実に反します。23区の火葬場の運営体制、主要事業者の資本関係、料金の根拠を一次情報で確認し、誤解されやすいポイントを整理します。
よくある主張を整理
以下、事実を順に確認します。
事実1 ー 23区の火葬場は9か所、公営2・民営7
```東京都23区には火葬場が9か所あります。公営は「瑞江葬儀所(江戸川区)」と「臨海斎場(大田区)」の2か所、残る7か所は民営です。民営7か所のうち6か所を東京博善が運営し、残り1か所は戸田葬祭場(板橋区)です。
参考:東京博善 斎場一覧/ 臨海斎場 公式/ 瑞江葬儀所(東京都公園協会)/ 葬研の解説記事(23区は9か所・民営7)
| 火葬場 | 区 | 運営 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 町屋斎場 | 荒川区 | 東京博善 | 民営 |
| 落合斎場 | 新宿区 | 東京博善 | 民営 |
| 桐ヶ谷斎場 | 品川区 | 東京博善 | 民営 |
| 四ツ木斎場 | 葛飾区 | 東京博善 | 民営 |
| 堀ノ内斎場 | 杉並区 | 東京博善 | 民営 |
| 代々幡斎場 | 渋谷区 | 東京博善 | 民営 |
| 戸田葬祭場 | 板橋区 | 株式会社戸田葬祭場 | 民営 |
| 臨海斎場 | 大田区 | 臨海部広域斎場組合 | 公営 |
| 瑞江葬儀所 | 江戸川区 | 東京都(公園協会) | 公営 |
東京博善が「23区の多く」を担っているのは事実ですが、運営は日本企業であり、東京の公営火葬場も存在します。
事実2 ー 東京博善と広済堂ホールディングスの関係
東京博善株式会社は広済堂ホールディングスのグループ会社です。広済堂ホールディングスは東京都港区に本社を置く日本企業で、東京証券取引所プライム市場に上場しています。IR資料にもとづく最新の企業情報は以下の通りです。
参考:株主総会・IR情報/ 株式の状況(上場・株主メモ)/ コーポレートガバナンス報告書(2025/06/27)
なお、2019年には米ベインキャピタルによるMBO(経営陣による買収)が話題になりましたが、価格妥当性などを巡って混乱し不成立となっています。これは「米ファンドによるTOBの行方」の話であり、中国資本による買収・支配を示すものではありません。
参考:M&A Online(2019/04/09)/ M&A総合研究所の解説
結論 「東京の葬儀場は中国資本に独占された」という断定は、一次情報(IR・上場情報)に照らすと事実ではありません。東京博善は広済堂グループに属しますが、広済堂は日本の上場企業です。
事実3 ー 料金は確かに高めだが、根拠は“公営/民営の仕組み差”
公営の代表例(瑞江葬儀所)
東京都の公営火葬場である瑞江葬儀所の火葬料(7歳以上・都民)は59,600円(2022年度改定)です。
参考:瑞江葬儀所 料金(東京都公園協会)
民営の代表例(東京博善 町屋斎場)
東京博善が公表する町屋斎場の「普通炉(大人)」は90,000円。設備グレードによって123,000円、160,000円といった設定もあります。
参考:東京博善 町屋斎場 料金
料金差は、公営が住民サービス価格であること、一方で民営は施設維持・更新費を利用料で賄うという仕組みの違いが主因です。「外国資本だから高い」という因果は確認できません。
なぜ「独占」「中国資本」という誤解が広がるのか
- 23区の民営7か所のうち6か所を東京博善が運営しており、シェアが高い事実はある
- 2019年のTOB騒動など投資ファンド関連のニュースが「外資=中国資本」と短絡的に誤読されやすい
- 葬儀費用の値上げ報道が不安心理と結びつきやすい
公共性が高い分野ほど、一次情報(公式サイト・IR・条例・料金表)に当たって確認することが大切です。
まとめ
出典・参考リンク
- 東京博善 公式「斎場一覧」:https://www.tokyohakuzen.co.jp/funeralhall/
- 町屋斎場 料金(東京博善公式):https://www.tokyohakuzen.co.jp/guide/ryokin/?hall=machiya
- 臨海斎場 公式:https://www.rinkaisaijo.or.jp/
- 瑞江葬儀所(東京都公園協会)料金:https://www.tokyo-park.or.jp/reien/mizue/price/index.html
- 葬研「東京博善の業績と…23区の火葬場事情」:https://souken.info/tokyo-hakuzen-mondaiten/
- 広済堂ホールディングス IR(株主総会・IR情報):https://www.kosaido.co.jp/ir/equity/meeting/
- 広済堂ホールディングス「株式の状況」:https://www.kosaido.co.jp/ir/equity/stocks/
- コーポレートガバナンス報告書(2025/06/27):PDF
- M&A Online「廣済堂TOB終了、残るは『対抗TOB』の行方」(2019/04/09):https://maonline.jp/articles/kosaido_tob_mbo201904