
朝日新聞の報道で、高市首相が「継戦能力を高めていく」と発言したことが伝えられました。これは安全保障関連の安保3文書を前倒しで改定する流れの中で出た言葉です。
この言い回しは一見すると専門的ですが、意味するところはかなり重いものです。この記事では、「継戦能力」とは何かをやさしく整理しつつ、戦争反対の立場から問題点を考えます。
「継戦能力を高めていく」とはどういう意味か
継戦能力とは、戦争や紛争が起きた際に、戦闘を長期間続けられる力のことです。
簡単に言えば、「短期間で終わる戦争」ではなく、「何週間、何か月も戦い続ける事態」を想定した準備を指します。
具体的には、次のような要素が含まれます。
- ミサイルや砲弾などの弾薬を十分に備蓄すること
- 燃料を安定して確保し続ける体制
- 戦闘機や装備品を修理し、動かし続ける能力
- 人員や物資を前線へ運ぶ輸送能力
つまり、「すぐに戦えなくなる状態を避け、戦争を続けられる国にする」という考え方です。
なぜ今、この発言が出てきたのか
背景には、ロシアとウクライナの戦争が長期化している現実があります。戦争が始まると、弾薬不足や補給の問題が深刻になり、想定よりも長引くケースが多いことが明らかになりました。
政府はこうした状況を踏まえ、2022年にまとめた安保3文書では不十分だとして、予定より早く見直しを行い、その中で継戦能力の強化を重視するとしています。
最大の問題点 戦争を前提にしてしまっている
戦争反対の立場から見ると、最も大きな違和感はここです。
「継戦能力を高める」という言葉は、戦争を防ぐための表現ではありません。戦争が起きたあと、どう戦い続けるかを考える言葉です。
本来、政治が優先すべきなのは次のようなことではないでしょうか。
- 戦争を起こさせないための外交努力
- 緊張を下げるための対話の継続
- 偶発的な衝突を防ぐための連絡体制
それより先に「長く戦う準備」が語られることで、国として戦争を現実の選択肢として受け入れてしまっているように見えます。
問題点1 防衛費の膨張と国民生活への影響
継戦能力を高めるには、弾薬の増産、備蓄施設の建設、燃料関連設備の整備などが必要になります。これらはすべて巨額の費用がかかります。
防衛費がさらに膨らめば、その負担は最終的に国民に返ってきます。増税や社会保障の抑制、教育や子育て予算へのしわ寄せが起きる可能性は否定できません。
戦争への備えが、日々の暮らしを圧迫していく構図には強い疑問が残ります。
問題点2 軍拡の悪循環を招くおそれ
日本が長期戦を前提に軍備を強化すれば、周辺国は警戒します。その結果、相手も軍備を増強し、地域全体の緊張が高まる可能性があります。
抑止力という言葉で説明されることが多いですが、実際には軍拡競争を引き起こし、不安定さを増す結果になることも少なくありません。
問題点3 日本の弱点は軍事だけでは解決しない
日本はエネルギーや食料を海外からの輸入に大きく頼っています。もし戦争で海上輸送が止まれば、弾薬があっても燃料や食料が不足します。
つまり、武器や弾薬の備蓄だけを増やしても、国として持ちこたえられるとは限りません。安全保障を考えるなら、生活や経済を支える基盤も含めた視点が必要です。
問題点4 平和主義との整合性
継戦能力を高めるという考え方は、専守防衛や平和主義との関係をどう説明するのかが問われます。
戦争を防ぐ備えと、戦争を続ける備えは似ているようで本質的に違います。その違いを曖昧にしたまま進めることには危うさがあります。
まとめ 戦争準備より先に考えるべきこと
高市首相の「継戦能力を高めていく」という発言は、日本が長期戦に耐えられる国になることを目指す姿勢を示しています。
しかし、戦争反対の立場から見ると、これは戦争を遠ざけるよりも、戦争を現実のものとして受け入れる方向に国を動かす発想に見えます。
必要なのは、まず戦争を起こさない政治です。防衛を語るのであれば、軍事だけを強化するのではなく、外交や対話、そして国民の生活を守る視点を中心に据えるべきではないでしょうか。