
日本では土葬は今でも法律上は完全に合法です。ところが現実には、土葬を受け入れてくれる場所がほとんどなく、選択肢として事実上成り立っていません。 特にイスラム教徒(ムスリム)の方々は火葬が宗教上禁じられているため、深刻な“埋葬先不足”に直面しています。 なぜ、法律では認められているのに日本では土葬がこれほど難しいのか。2025年12月時点の法律、自治体の規制、そして現場の状況から整理していきます。
土葬は日本でも合法。ただし「ハードル」が非常に高い
まず前提として、国の法律(墓地埋葬法)では土葬は禁止されていません。今でも法的には完全に合法です。
ところが、実際に土葬を希望してもすぐできるわけではありません。国の法律とは別に、自治体の条例や現地の環境条件が強く影響し、結果として「ほぼ不可能」という状況が生まれています。
法律はOKなのに「ほぼ不可能」になった4つの理由
① 自治体の条例で事実上禁止されている
最も大きな理由がこれです。国の法律で認められていても、多くの自治体では条例や指導要綱で土葬を禁止、または厳しく制限しています。
特に東京23区や大阪市などの都市部では、衛生面・土地の不足などを理由に、条例で土葬を認めていないケースがほとんどです。
② ほとんどの墓地が「火葬前提」になっている
日本の火葬率は99.9%超と世界最高水準です。このため、公営・民営を問わず墓地の規約は「焼骨(遺骨)を埋蔵する」前提で作られています。
土葬用の区画が存在しないため、「希望しても受け入れができない」という状況が全国に広がっています。
③ 土地の広さと衛生面の不安
土葬には、火葬より大幅に広い土地が必要です。穴を掘るスペースに加え、衛生面の観点から周囲との距離を確保する必要があります。
- 区画が大きく、効率が悪い
- 地下水や土壌への影響が懸念される
- 腐敗に対する不安から、住民の理解が得られにくい
こうした理由から、都市部では物理的に土葬を行うのが難しくなっています。
④ 新設しようとすると反対運動が起きやすい
新しく土葬墓地を作ろうとすると、③の理由もあって近隣住民の反対が強く、計画が止まってしまうケースが多く見られます。
さらに、昔は土葬を受け入れていた古い墓地も、管理の難しさから火葬専用への転換が進んでおり、利用できる場所は減り続けています。
現在、日本で土葬できる場所はあるのか?
国内には土葬可能な場所が数えるほどしか残っておらず、いずれも状況は限定的です。(空き状況は変動するため、事前の確認が必須です)
| 地域 | 状況・主な例 |
|---|---|
| 北海道 | 土地が広く規制が比較的緩やか。「よいち霊園(余市町)」など一般の方でも土葬可能な霊園が存在 |
| 山梨県甲州市 | ムスリム専用の土葬墓地が古くから運用されている |
| 大分県日出町 | ムスリム向けの土葬墓地が2024年頃に開設。住民との協議を重ね実現した新設事例 |
| その他地域 | 茨城県や和歌山県、沖縄の一部地域に宗教法人管理の土葬区画がわずかに残る |
※都市部の霊園(多摩地域など)でも過去に例はありますが、現在は新規受付を停止している場合が多い状況です。
特に深刻なのは「在日ムスリム」の場合
イスラム教では火葬が禁じられており、土葬が義務とされています。日本には20〜25万人ほどのムスリムが暮らしており、増加傾向にあります。
しかし、国内に土葬可能な墓地が非常に少ないため、遺体を母国に空輸するケースが増えています。 空輸費・遺体処置などを含めると200〜400万円に達することもあり、家族への精神的・経済的負担は大きくなっています。
まとめ
日本では「国の法律」では土葬は合法ですが、「自治体の条例」や「土地・衛生面の制約」により、事実上選択肢として十分に機能していないのが現状です。
大分県日出町のように、多文化共生の観点から新たな土葬墓地の整備が進む例も出ていますが、広い土地の確保や住民理解などの課題は依然として重く、全国的な整備には時間がかかりそうです。
社会が多様化する中で、火葬以外の埋葬方法をどう確保していくのかが、今後の重要なテーマになっていくと考えられます。

