2026年6月8日の参議院の委員会で、日本保守党の北村晴男議員が「生活保護を受けている外国人が体外受精を無料で受けられるのはおかしいのではないか」と問題提起しました。外国人は公的保険ではなく民間保険にすべきだという提案に、厚生労働省(医療や年金を担当する省庁)は「制度上できない」と答えています。この一件はSNSで大きな反響を呼んでいます。何が問われたのか、わかりにくい「仕組み」のところから順番に整理します。
① 国会で何が起きたか
舞台は6月8日の参議院行政監視委員会です。これは、国の行政がきちんと行われているかをチェックする委員会です。
北村議員は、不妊治療を行う医師のブログを引用する形で質問しました。「生活保護の受給者は医療費の自己負担がゼロのため、保険が使えるようになった体外受精も無料で受けられるようになった」と指摘。そのうえで「生活保護を受ける外国籍の若い人は、タイミング療法や人工授精といった段階を飛ばして、最初から高額な体外受精のみを希望する傾向がある」と述べました。
さらに、その医師から聞いた話として「中国籍の人が多く、韓国籍やスリランカ籍も比較的多い」と説明し、外国人については「民間保険に任せるべきだ」と提案しました。これに対し、厚労省は否定する答弁をしています。
② 背景・経緯――なぜ「無料」になるのか
ここが少し複雑なので、2つの制度に分けて説明します。
1つ目は「不妊治療の保険適用」です。 以前、体外受精などの不妊治療は全額自己負担で高額でした。これが2022年から公的医療保険の対象になり、原則3割負担で受けられるようになりました(43歳までなどの条件があります)。子どもを望む人にとって負担を軽くする、前向きな政策でした。
2つ目は「生活保護の医療扶助」です。 生活保護を受けている人は、保険が使える医療については自己負担がゼロになります。
この2つが重なると、「生活保護を受けている人は体外受精も自己負担ゼロ(無料)で受けられる」ことになります。ここで大事なのは、この仕組み自体は相手が日本人でも外国人でも同じだという点です。北村議員が問題にしたのは、ここに「外国人への生活保護」という論点が加わる部分でした。
そもそも外国人への生活保護は、生活保護法に明確な規定がありません。現在は、国が人道上の観点から自治体に出した通達に基づいて運用されているとされます。過去には最高裁も、外国人には生活保護法に基づく法的な受給権はないと判断したと報じられています。それでも運用として支給が続いている――この「法律と運用のズレ」が、議論の土台にあります。
③ 各方面の反応・論点
厚労省の「できない」という答えは、「問題を直す気がない」という意味ではありません。条件を満たした外国人は公的保険の加入者(被保険者)にあたるため、現在の法律のもとでは民間保険への切り替えはできない、という制度上の説明です。
注意したいのは、北村議員の発言の一部は裏づけの強さが異なる点です。「外国籍の若い人が最初から体外受精を希望する」「中国籍が多い」といった部分は、一人の医師の話やブログを引用したものであり、国の統計で確認された数字ではありません。あくまで「そう述べた」という段階の情報です。
賛同する声は、国籍そのものより「制度の公平性」を問う点に集まっています。真面目に納税し高額な治療費を払う日本人と比べて不公平だ、という意見です。一方で、外国人の医療費は全体としては限定的だとする見方もあり、感情的な反発と制度上の事実は切り分けて考える必要があります。
④ 今後の展開・まとめ
論点は、大きく3つの層に分かれます。1つ目は「生活保護受給者は不妊治療も無料になる」という仕組みそのもの。2つ目は「外国人にも事実上、生活保護が支給されている」という運用。3つ目は「その対象や傾向」という、まだ裏づけの弱い主張の部分です。
根っこにあるのは、法律と実際の運用のズレです。是正するなら行政の判断だけでなく法改正が必要だ、との声も出ています。ただし生活保護や医療制度は、本当に必要な人を守るための仕組みでもあります。SNSの勢いに流されず、どこからどこまでが事実なのかを見極めることが、この問題を考える出発点になりそうです。
参照元
- 産経新聞「『生活保護の外国人が無料で体外受精』保守党・北村晴男氏 外国人は『民間保険に』参院委」 https://news.yahoo.co.jp/articles/7e1c5f72ed3b8e4c9efd7aeeee818cc1399a0bc7
- おときた駿 公式サイト「外国人生活保護と不妊治療の無償化問題――制度の抜け穴を直視せよ」 https://otokitashun.com/blog/daily/40226/
- アゴラ「外国人生活保護と不妊治療の無償化問題:制度の抜け穴を直視せよ」 https://agora-web.jp/archives/260402100802.html