ニュース概要
長野県では、ガソリンの小売価格が全国的に見て非常に高い状況が続いていました(2025年2月時点でレギュラーガソリン1リットルあたり約191.7円、全国3番目の高さ)。この高価格の背景に、長野県石油商業組合(以下、組合)に加盟するガソリンスタンドが価格を事前に調整する「カルテル」(不当な価格協定)を結んでいた疑いが浮上しました。この行為は独占禁止法に違反する可能性があり、公正取引委員会(公取委)が調査を開始。消費者や行政の注目を集めています。
疑惑の内容
組合に加盟するガソリンスタンドが、価格の値上げや値下げの幅、タイミングを事前に連絡網で調整していた疑いが持たれています。以下が主なポイントです
- 価格調整の仕組み:組合の支部役員が電話やファクスで「〇円値上げ」「〇円値下げ」といった指示を出し、スタンドがそれに従って価格を統一していたとされています。
- 証拠:信濃毎日新聞が入手した電話の音声データやファクスにより、組織的な価格調整の可能性が報道されました。
- 期間:関係者の証言では、こうした行為は数年前から、場合によっては30年前から続いていた可能性があります。
- 影響:長野県内のガソリン価格は近隣の愛知県(176.7円)や静岡県(185.9円)に比べて高く、県民の家計負担が増大。「県外で給油する」ケースも増えていました。
関係者の動き
この疑惑に対し、以下のような動きがありました
- 公正取引委員会(公取委):2025年2月18日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで組合事務所に立ち入り検査を実施。特に北信地区の支部が関与した疑いが強いとされています。
- 長野県:県は疑惑を重大視し、2月6日に組合に対し2週間以内に事実関係の調査と報告を要求。しかし、組合の中間報告(2月28日)では「価格調整の事実はなかった」と否定され、阿部守一知事は「報告が不十分」と強い不満を表明。県は公取委とは別に第三者機関による調査を求めました。
- 組合の対応:当初、組合は価格調整への関与を否定し「コンプライアンス違反はない」と主張。しかし、6月30日、組合が設置した第三者委員会が「複数の支部で価格調整が行われ、組織ぐるみだった」と認定。独占禁止法違反(3条および8条)に抵触する行為があったと報告しました。
問題の背景
長野県のガソリン価格が高い理由には、以下のような要因が指摘されてきました
- 地理的要因:長野県は内陸部に位置し、製油所からの輸送費や小規模事業者の多さが価格高騰の一因とされてきました。
- カルテル疑惑:今回の疑惑により、価格操作がさらなる高値の原因だった可能性が浮上。2024年8月から2025年1月まで、県内のガソリン価格は全国1位を記録した時期もありました。
- 消費者への影響:高価格により、県民は県外でガソリンを購入するなど負担が増大。「長野県の価格は異常」との声が上がっていました。
現在の状況(2025年7月時点)
以下が最新の状況です
- 第三者委員会の報告(6月30日)で、組合の組織的な価格調整が確認され、独占禁止法違反の可能性が明確に。報告書は組合のホームページで公開されています。
- 公取委の調査は継続中で、詳細な事実解明が待たれます。
- 県は「ガソリン価格の適正化等に関する検討会」を開催し、価格適正化に向けた対策を検討中。
- 組合は信頼回復を目指すとしていますが、具体的な改善策や責任の明確化はまだ進んでいません。
なぜ問題なのか?
この疑惑が問題視される理由は以下の通りです
- 独占禁止法違反:事業者が価格を共同で決めるカルテルは、自由競争を阻害し、消費者に不当に高い価格を押し付ける違法行為です。
- 消費者への影響:長野県民が長期間、高価格でガソリンを購入せざるを得なかった可能性があり、家計への負担が大きかった。
- 信頼の失墜:組合やガソリンスタンドへの信頼が揺らぎ、業界全体のイメージ悪化が懸念されます。
今後の注目点
今後、以下の点に注目が集まります
まとめ
長野県石油商業組合によるガソリン価格の事前調整疑惑は、組合が組織的に価格を操作し、高価格を維持していた可能性を示す重大な問題です。公取委の立ち入り検査や第三者委員会の報告により、カルテル行為が確認され、独占禁止法違反の疑いが強まっています。長野県民の不満や知事の強い姿勢を受け、調査はさらに進む見込みです。この問題は、消費者保護と公正な市場競争の観点から、今後も注目されるでしょう。