生活保護費減額の背景と訴訟の経緯
日本では、憲法第25条に基づく生活保護制度が最低限の生活を保障しています。しかし、2013年から2015年にかけて、厚生労働省(厚労省)は物価下落や一般低所得世帯とのバランスを理由に、生活保護費(生活扶助基準)を平均6.5%、最大10%削減しました。この減額により、約670億円の財政削減効果がありました。
これに対し、全国29都道府県の1,000人以上の受給者が「健康で文化的な生活を下回る」として、集団訴訟(「いのちのとりで裁判」)を提起。訴訟では、以下の手法が問題視されました
- ゆがみ調整:一般低所得世帯の消費実態を反映(約90億円削減)。
- デフレ調整:物価下落率を基準に反映(約580億円削減)。
受給者は、厚労省のデータ分析や専門家検討が不十分で、テレビやパソコンなど受給者が購入しにくい品目の物価下落を過大評価したと主張。手続きの透明性も欠如していると訴えました。
最高裁の判決 違法とされた理由
2025年6月27日、最高裁判所第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、2013~15年の生活保護費減額を「違法」と判断し、受給者の勝訴を確定させました。主なポイントは以下の通りです
- 厚労省の「ゆがみ調整」と「デフレ調整」は、適切なデータや専門家検討が不足し、恣意的だった。
- 「2分の1処理」など、手続きの透明性が欠如。
- 国の裁量権の乱用が認められ、生活保護法の目的(健康で文化的な生活の保障)に反すると判断。
ただし、受給者が求めた1人あたり1万円の損害賠償は認められませんでした。この判決は全国の同様の訴訟に影響を与える統一判断です。
追加支給の概要 誰が対象?
最高裁の判決を受け、厚労省は2013~15年の減額分の遡及補填を検討しています。当時の受給者は約200万人で、減額総額は約670億円。追加支給の対象は原告だけでなく、当時の全受給者に及ぶ可能性があります。支給の総額は最大数千億円規模になる見込みです。
ただし、支給方法や対象者の特定(死亡や転居で連絡が取れないケースなど)、財源確保が課題となっています。
1人あたり追加支給額の推定
現時点(2025年6月28日)で厚労省の公式発表はなく、正確な支給額は未定です。ただし、以下のように推定されます:
- 減額総額670億円 ÷ 受給者200万人=平均約3.35万円/人。
- 世帯構成や地域により、月額1,000~2,000円の減額が3年間続いた場合、1人あたり3.6万~7.2万円程度の可能性。
- 例えば、3人世帯では月額数千円~1万円の減額だったため、世帯で十数万円の支給が考えられる。
支給額は個別の減額幅や受給期間により異なり、詳細は厚労省の今後の発表を待つ必要があります。
今後の影響と課題
この判決は、生活保護制度の基準改定に透明性や専門性の強化を求める契機となります。一方で、以下のような議論が予想されます:
- 財政負担:数千億円規模の追加支給による予算への影響。
- 社会的な反応:X上では「生活保護へのバッシング増加」や「新規申請の厳格化」を懸念する声も。
- 事務的な課題:対象者特定や支給手続きの複雑さ。
受給者にとっては生活支援の機会ですが、支給までの期間や手続きの簡便さが重要です。
まとめ 追加支給への期待と注意点
2013~15年の生活保護費減額は最高裁で違法とされ、約200万人の受給者に追加支給の可能性が広がりました。1人あたり数万円~十数万円の支給が推定されますが、詳細は厚労省の発表待ちです。今後は、制度の透明性向上と公平な運用が求められます。最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認してください。