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やさしく疑問を解説

玉木雄一郎氏の「女性蔑視」発言問題 英語表現の誤解と背景を解説

発言の背景と内容

国民民主党玉木雄一郎代表が2025年6月24日に日本外国特派員協会(FCCJ)で行った記者会見での発言が、女性蔑視と受け取られ、批判を招きました。玉木氏は、国民民主党の女性支持率が低い理由と改善策について問われ、英語で次のように回答しました

「I think our policy is good not only for men but also women, but I think it’s very difficult to understand for them.」(私たちの政策は男性だけでなく女性にとっても良いものだと考えていますが、女性にとって理解するのはとても難しいと思います)

この発言は、国民民主党の政策が複雑で、特に女性にとって理解しにくいため支持を得られていない、という趣旨でした。しかし、「女性にとって理解するのが難しい」という表現が、女性の理解力そのものを否定するニュアンスとして受け取られ、「女性蔑視」との批判がSNSなどで広がりました。

どの表現が問題だったのか

問題の核心は、玉木氏が使用した英語のフレーズ「it’s very difficult to understand for them」にあります。この表現には以下の問題点があります

  • 「understand」のニュアンス:英語の「understand」は「理解する」という意味で、知的能力や認知力を指します。このため、「女性にとって理解するのが難しい」と聞こえると、女性の知的能力が低いと暗に示唆していると解釈されかねません。実際、SNS上では「女性が理解できないと言っている」との批判が噴出しました。

  • 「them」が女性を指す文脈:発言の中で「them」が女性を指していることが明らかであり、特定の性別に限定した表現が差別的と受け取られました。特に、「男性だけでなく女性にとっても良い政策」と対比させたことで、女性だけが理解に苦しむという印象を与えてしまいました。

  • 曖昧な主語の欠如:英語の構造上、「it’s very difficult to understand」の主語が不明確で、聞き手が「女性が理解できない」と解釈しやすかった点も問題を大きくしました。意図としては「政策が女性に伝わりにくい」だった可能性がありますが、表現が曖昧だったため誤解を招きました。

英語力が原因だったのか

玉木氏はハーバード大学ケネディスクールで修士号を取得しており、英語力は一般的に高いとされています。しかし、今回の発言では以下のような英語力に関する問題が指摘されています

  • 不適切な単語選択:玉木氏は後に、「understand(理解する)」ではなく「deliver(届ける)」を使うべきだったと釈明しました。「it’s very difficult to deliver to them」(女性に政策を届けるのが難しい)であれば、女性の理解力の問題ではなく、党のコミュニケーション不足を強調する表現となり、誤解を避けられた可能性があります。

  • 即興での英語表現の限界:記者会見では即興で英語を話す必要があり、ニュアンスを正確に伝えるための準備が不足していた可能性があります。英語が流暢であっても、センシティブな話題での微妙な表現の違いをその場で適切に選ぶのは難しい場合があります。

  • 文化的・社会的感度の欠如英語圏ではジェンダーに関する発言が特に敏感に受け取られ、特定のグループを一括りにする表現は避けるべきです。玉木氏の英語力自体は問題ないかもしれませんが、国際的な記者会見の場での文化的配慮が不足していた可能性があります。

一部のXユーザーは、玉木氏の英語力自体は「日本人のトップ1%レベル」と評価しつつ、表現の選択ミスが問題だったと指摘しています。一方で、「ハーバード大卒なのに英語が未熟という言い訳は通用しない」との批判もあり、英語力そのものより表現の不適切さが主な原因と考えられます。

玉木氏の釈明と謝罪

批判を受けた玉木氏は6月25日にXで以下のように釈明し、謝罪しました

  • 意図したのは「国民民主党の政策は女性にとっても良いが、女性に届いていない実状があり、伝えるのが難しい」という内容だった。

  • 「it’s very difficult to understand for them」ではなく、「it’s very difficult to deliver to them」のような表現を使うべきだった。

  • 「英語が未熟なため、拙い表現をしてしまったことを反省しています。決して女性蔑視をするつもりはありませんでした」と述べ、女性支持率の低さは党の政策伝達の問題だと強調しました。

しかし、この釈明に対しても「英語力の問題にすり替えている」「元の発言は明らかに差別的」との批判が続き、議論は収まっていません。

なぜ批判が拡大したのか

  • ジェンダー感度の高い時代背景:現代の日本や国際社会では、ジェンダーに関する発言が厳しく精査されます。過去にも森喜朗元首相の「女性がたくさん入る会議は時間がかかる」発言(2021年)が問題視されたように、性別を一括りにする表現は批判を招きやすいです。
  • 玉木氏の過去の不祥事:2024年11月に報じられた不倫問題や、党の女性候補に関する対応が批判されており、女性問題に対する玉木氏の姿勢に疑問を持つ声が背景にあります。これが「女性蔑視」との解釈を増幅した可能性があります。

  • 政治的対立立憲民主党泉健太前代表や蓮舫氏、社民党福島瑞穂党首など、野党議員が玉木氏の発言を強く批判したことも、議論を政治的な対立の場に広げました。

どうすれば良かったのか

玉木氏が誤解を避けるためには、以下のような表現や対応が考えられます

  • 適切な単語の選択:「understand」ではなく「reach」や「deliver」など、コミュニケーションの課題を強調する単語を使う。例:「It’s been challenging to effectively communicate our policies to women.」

  • ジェンダー中立な表現:女性に限定せず、「一部の有権者にとって」など、より包括的な表現を用いる。例:「Our policies are complex and may be hard for some voters to grasp.」

  • 通訳の活用:国際的な場では、英語で即興回答するリスクを避け、通訳を介して日本語で明確に答える選択肢もあった。

  • 事前準備ジェンダーに関する質問が予想される場合、センシティブな話題に備えた表現を準備しておく。

まとめ

玉木雄一郎氏の発言が女性蔑視と批判された原因は、英語の「it’s very difficult to understand for them」という表現が、女性の理解力を否定するニュアンスとして解釈されたためです。玉木氏は「deliver(届ける)」の意図だったと釈明しましたが、単語選択のミスとジェンダー感度の欠如が誤解を招きました。

英語力自体は高いとされる玉木氏ですが、即興の場での表現の不適切さが問題を大きくし、過去の不祥事や政治的対立も批判を増幅させました。今後、こうしたセンシティブな話題では、より慎重な表現と文化的配慮が求められます。