特別支給の老齢厚生年金は、60〜64歳のあいだに受け取れる「つなぎ年金」です。
厚生年金の支給開始年齢を60歳から65歳へ引き上げる際の経過措置として設けられました。
◆ この記事のポイント5行まとめ
- 対象は男性:昭和36年4月1日以前/女性:昭和41年4月1日以前生まれ。
- 厚生年金の加入期間1年以上+年金資格期間10年以上が必須。
- 定額部分を受け取れるのは
男性=昭和24年4月1日以前/女性=昭和29年4月1日以前生まれ。 - 働きながら受給する場合、給与+年金が月51万円超なら超過分の½がカット(2025年度・全年齢共通)。
- 65歳になると自動で終了し、老齢基礎年金+老齢厚生年金にバトンタッチ。
1. 対象になる人は?
2. いつから受け取れる?早見表
▼ 男性(昭和28年4月2日〜昭和36年4月1日生まれ)
生年月日 | 報酬比例部分 | 定額部分 |
---|---|---|
昭和28年4月2日〜昭和30年4月1日 | 61歳 | — |
昭和30年4月2日〜昭和32年4月1日 | 62歳 | — |
昭和32年4月2日〜昭和34年4月1日 | 63歳 | — |
昭和34年4月2日〜昭和36年4月1日 | 64歳 | — |
▼ 女性(昭和33年4月2日〜昭和41年4月1日生まれ)
生年月日 | 報酬比例部分 | 定額部分 |
---|---|---|
昭和33年4月2日〜昭和35年4月1日 | 61歳 | — |
昭和35年4月2日〜昭和37年4月1日 | 62歳 | — |
昭和37年4月2日〜昭和39年4月1日 | 63歳 | — |
昭和39年4月2日〜昭和41年4月1日 | 64歳 | — |
※ 男性は昭和24年4月1日以前/女性は昭和29年4月1日以前生まれなら、報酬比例部分と同時に定額部分も支給されます。
※ 長期加入(44年以上)や障害状態などの特例で定額部分が支給されるケースもあります。
3. 受け取れる金額イメージ
- 定額部分+報酬比例部分:男性 昭和24年4月1日以前/女性 昭和29年4月1日以前
- 報酬比例部分のみ:それ以降に生まれた方(特例を除く)
- 2025年度(令和7年度)は物価スライドで+1.9%
4. 手続きの流れ
- 受給開始年齢の約3か月前に日本年金機構から請求書が届く
- 到達後に請求書・本人確認書類・振込口座を提出
- 誕生日の翌月分から支給スタート(偶数月15日に2か月分まとめて振込)
5. 働きながら受け取る場合(在職老齢年金)
- 給与+年金の合計が月51万円超なら、超過分の½がカット(全年齢共通・2025年度)
6. よくある勘違い
- 65歳まで受給を遅らせても増額されません(繰下げ対象外)
- 国民年金だけでは特別支給は受け取れません。厚生年金1年以上が必要
- 65歳以降も上乗せで受け取れるわけではなく、通常の老齢年金に統合されます
7. ケーススタディ 1962(昭和37)年生まれの妻の場合
7-1 年金タイムライン
年齢・年月 | イベント | 受け取れる年金 |
---|---|---|
60 歳(2022 年 5 月) | 老齢基礎年金を繰上げ請求 | 減額された基礎年金のみ |
63 歳(2025 年 5 月) | 特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給権発生 | 減額基礎年金+報酬比例部分が上乗せ |
63 歳 2 か月目以降 | 請求が遅れても未払い分をまとめて受給 | 6月・7月分などを一括振込 |
65 歳(2027 年 5 月) | 特別支給は終了し、通常の老齢厚生年金へ | 減額基礎年金+老齢厚生年金 |
7-2 ざっくり金額シミュレーション
平均標準報酬額 | 加入年数 | 年間額 | 月額 |
---|---|---|---|
35 万円 | 25 年 | 約 57.6 万円 | 約 4.8 万円 |
25 万円 | 30 年 | 約 49.3 万円 | 約 4.1 万円 |
20 万円 | 20 年 | 約 26.3 万円 | 約 2.2 万円 |
- 報酬比例部分は「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数」で計算(2003年4月以降分)。
- 繰上げした基礎年金は終身減額ですが、報酬比例部分には影響しません。
- 在職中で給与+年金が月51万円を超えると、超過分の½がカットされます。
7-3 よくある Q&A(実例バージョン)
- Q. 63歳の請求書を出し忘れたら?
- A. 受給権発生日(63歳誕生日の前日)から5年以内に請求すれば、未払い分をさかのぼって受け取れます。
- Q. 基礎年金の減額は元に戻る?
- A. 60歳で繰上げた老齢基礎年金の減額率は一生固定です。
- Q. 給与が高いとどれくらい減る?
- A. 給与+年金が月51万円を超えた分の50%がカットされます。たとえば月60万円なら超過9万円×50%=4.5万円が減額。
参考資料(主な公開情報)
注意事項
年金制度は毎年見直しが行われ、加入記録・賃金記録・物価改定率などで
個別の年金額や支給時期が変わります。
本記事は 2025 年 6 月 9 日時点の情報をもとにまとめていますが、
最終的な可否や金額は必ず日本年金機構・年金事務所でご確認ください。