2025年5月27日、自民・公明・立憲の3党は「基礎年金の底上げ」を含む年金制度改革案を大筋で合意しました。
少子高齢化が進む日本にとって、年金改革は将来の暮らしを大きく左右する重要テーマです。本記事では、基礎年金の底上げとは何か、そして世代別にどんなメリット・デメリットがあるのかを分かりやすくまとめます。
1. 基礎年金(国民年金)とは?
- 20歳以上60歳未満の全国民が加入する“老後の土台”となる年金。
- 2025年度の満額は月約 6.9 万円(年 83 万円程度)。
- 厚生年金に入っていない自営業・フリーランス・非正規の人は、この基礎年金が老後収入の中心になる。
ところが財政検証(公的年金の健康診断)では、2040年代半ばまでに給付水準が最大30%下がる恐れが指摘されています。「底上げ策」はこの“将来の目減り”を食い止めるための安全ネットです。
2. 改革案で示された「底上げ」の仕組み
- 2029年に行われる次回財政検証で、もし給付水準が一定以下に下がると判定された場合、国が自動的に基礎年金を補填。
- 財源は
- 厚生年金の積立金の一部
- 国庫負担(税金)
- 補填方法や金額は検証結果に連動する「トリガー方式」なので、景気や賃金の動きによって変動。
ポイント:実際にいくら増えるかは2029年の検証結果を待たなければ確定しません。
3. 立憲民主党の試算例(イメージ)
参考として、立憲民主党が示したシミュレーションを見てみましょう。
モデルケース | 改革前 | 改革後(底上げ適用) | 差額 |
---|---|---|---|
40歳男性 (平均賃金・40年間就労) |
総受給額:約 3,600 万円 | 総受給額:約 3,846 万円 | + 約 246 万円 |
※あくまでも試算値。将来の賃金・物価・保険料納付状況で変わります。
4. 世代別のメリット・デメリット
◆ 就職氷河期世代(現在40〜50代)
- メリット:非正規比率が高く厚生年金が薄い層にとって、基礎年金の増額は生活の下支えになる。
- デメリット:未納・未加入期間が長いと満額をもらえず、恩恵が限定的になる恐れ。
◆ 若年層(30代以下)
◆ 高齢層(60代以上)
- メリット:制度全体が安定することで破綻リスクが下がる。
- デメリット:厚生年金積立金を基礎年金に回すことで、一部の高所得受給者は一時的な減額リスク。
5. 財源問題と今後の課題
- 厚生年金の積立金をどこまで振り替えるか──会社員・経営者から「流用だ」との批判も。
- 国庫負担は景気悪化時に不足分を補う必要があり、追加で年2〜3兆円規模の公費が必要になる可能性。
- 2029年の財政検証で具体的な底上げ額が決まるまで、最終的な増減額は不透明。
6. まとめ 注目ポイントはここ!
- 基礎年金の底上げは氷河期世代・自営業など低年金リスク層を守る仕組み。
- 一方で厚生年金積立金の取り崩しや国庫負担増など、財源を巡る課題が残る。
- 2029年の財政検証がターニングポイント。給付水準・増税規模など具体策に注目。
年金制度は「自分にはまだ先の話」と思いがちですが、今の決定が将来の生活を左右します。世代ごとの立場や負担を知ったうえで、今後の議論をウォッチしていきましょう。