NHKが報じたところによれば、政府は「就職氷河期世代」への支援を強化する方針を続けている。新たな支援プログラムでは、職業訓練や就労支援が引き続き柱とされ、自治体による相談支援や情報提供の体制整備も進められている。しかし、就労機会そのものが限定される中で、支援の方向性を見直すべき段階に来ているとの指摘もある。
支援策の現状と限界
政府は2019年から就職氷河期世代向けの就労支援施策を展開し、約10万人が支援を受けてきた。しかし、同世代の全体規模(約1,700万人)に対してはごく一部にとどまる。さらに、支援対象者の年齢は既に40代後半から50代半ばに達しており、再就職やスキルアップの実現が現実的に難しい層も多い。
NHKの取材では、支援を受けた人の中にも「正社員としての採用には結びつかなかった」「高齢化とともに体力的にも厳しい」といった声が紹介されている。今後は、「働くこと」そのものを支えるだけでなく、「働けない・働かない状態」でも生きていける社会的セーフティネットが必要とされている。
次に求められるのは生活基盤の安定
就職氷河期世代への支援は、就労促進だけでなく、生活の基盤を安定させる支援にフェーズを移す必要がある。主な提案は以下のとおり。
1. 住宅支援の強化
高騰する都市部の家賃は、低収入世帯にとって大きな負担となっている。公営住宅の拡充や家賃補助制度の整備により、住まいの安定が図られれば、生活の見通しが立ちやすくなる。
2. 最低年金水準の保障
非正規雇用が長かった氷河期世代は、年金加入期間が短く、将来の年金額も低い。月5〜6万円にとどまるケースも少なくなく、生活保護に依存せざるを得ない状況も想定される。最低でも月8万円程度を下限とする「年金底上げ策」が必要ではないか。
3. 税・社会保険料の軽減措置
基礎控除の引き上げや、氷河期世代に特化した所得控除制度の導入により、手取り収入の増加と生活の安定を支援する施策が考えられる。
4. 孤立防止と地域支援の拡充
孤独・孤立の問題も深刻だ。自治体による交流の場や無料相談窓口の整備など、地域に根ざしたソーシャルサポートの強化も重要である。
支援の目的を「就労」から「生活の保障」へ
就職氷河期世代は、長年にわたり社会構造の変化による不利益を被ってきた世代だ。一定の年齢を超えた今、単なる「就労支援」では十分な効果を上げにくいのが現実である。
今後の支援は、働ける人への再チャレンジ支援と同時に、「働けない」「働かない」ことを前提とした社会保障の整備も並行して進める必要がある。支援の質と方向性を再定義する時期に来ているのではないか。